イク~、なんてね

ほぼ一年前から、本の原稿を書き始めました。それが来月に、ようやくカタチになる予定なのですが、校正の段階で悩んだことがいくつかありました。たとえば「言う」と「行く」です。
「それはこういうことです」などと書くときの「いう」を、私は原則としてひらがなに開くことにしています。では、「それは違法であるといわれています」はどうか。この例では、不特定多数の人たちが言っているということですから「言われています」の方がわかりやすいでしょう。一冊の本の中ではできれば統一したいものですが、無理に統一しようとすると、どこかで矛盾が生じてしまうようです。それぞれの文脈によって異なっていてもよいのではないか、という(注:この場合はひらがなでしょう)ような鷹揚なスタンスが正解であるように思います。
「企業ごとに見て行くと」といった場合の「行く」にも悩みました。編集者さんからは「いく」に統一しましょうと提案されました。これには少々違和感を覚えたのですが、結果としては提案に従うことにしました。
違和感というのは、私は「行く」を「ゆく」と読むのを好むからです。辞書では「いく」も「ゆく」も許容されています。現代では「いく」と読む人の方が多く、「ゆく」は伝統的であり、古めかしいとも言えます。その妥協として、私はいつも「行く」と漢字で書くことにしています。
もっとも「いく」と「ゆく」と、漢字の「行く」には微妙なニュアンスの違いがあることも十分承知しております。表題に掲げた「イク~」などは、「ユク~」でも「行ク~」でも表現できかねる状態を示しておりますな。
さて、一昨日のことです。新しくiPod Touchを購入しました。いままで愛用していた旧機種より軽いし、WiFiのある環境ならメールもできるしサイトを見ることもできるので、これは便利じゃないか、と考えたからです。そこで新機種をあれこれいじっておりましたら、この機械では、「ゆく」と打って「行く」と漢字変換できないことに気がつきました。編集者さんの提案は卓見であったとも言えますが(注:この場合は「言え」でしょう)、アップルは日本語を知らないんだとも言えそうです。そうでなければ、明らかなバグですよ、これは。〈kimi〉

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