このところ続けざまに、IRに関する勉強会やセミナーへのスピーカーとしての出席依頼をいただきました。
現役のIR担当者は話にくいようだから実務を卒業したばかりの人間を探そう、というコンセプトに私が見事に当てはまってしまったようです。
現役のみなさんがお断りになる最大の理由は、会社が認めないということではないでしょうか。できるだけボロを出さないようにIRをやっているのに、そんな場に引き出されてポロっと露見してしまったら大変。出席しても明らかな利益が見込めず、リスクだけ負うのでは間尺に合わないとお考えになるのだろうと想像します。それも理解できないではありませんが、少々情けない気もします。
私はバリバリの現役のときから、いろいろなIR関係の集まりやセミナーでお話をしてきました。企業秘密はもちろん、勤め先の生々しい裏話などもできません。いくら面白くても経営者や社員の名誉に関わる話もできません。そこがちょっぴり残念ではあったのですが、そんなことを話さなくても、事業会社(発行体)のIR担当者としての経験や考え方を率直に申し上げるのは、それなりに価値があると信じておりました。
証券市場のプレーヤーとしては投資家、証券会社、そして発行体があり、それらを支えるものとして取引所や監視機関や行政、さらに法曹界などがあるわけですが、この数年次々に導入されて来たさまざまなルールの制定過程では、発行体の声が一番小さいと感じられてなりませんでした。発行体における不祥事が次々に明るみに出て、大きな声でものが言えなくなったということもあるのでしょうが、それなら証券会社だってファンドだって同じこと。問題は、一般に発行体のIR担当者における専門性が、他に比較して浅いというところにあるような気がします。
私とて胸を張って専門性をウンヌンできる立場にはありませんが、IRの第一線で日々アナリストや投資家のみなさまと丁々発止をやっていれば、それなりに言いたいことは出てきます。それだけでも発言する意味があると考えておりました。現状のような状態が続けば、発行体にとってさらに負担が増えるような気がします。もっともっと発言をされたらいかがでしょうか、と現役の方々にはお勧めしたいところです。
さて、私がそのIRの現場を離れて約半年。10年以上もやってきたことですから、そう簡単には忘れはしませんが、生々しさはだいぶ薄れてきました。どんなお話をしたらよいか、フィルムを巻き戻して(この比喩はもう古い)、ここはじっくり考えなければなりません。企業を離れたからと言って、うかつな裏話ができないのは、いまも変りはありませんが。