知ったかぶりは差別のもと


世の中には、多くの人とどこか異なる行動をしたり、理解の仕方をしたりする人が少なからず存在します。そういう人たちとは、「なんか変だよなあ」と思いながらつき合って行くわけですが、近頃は「あの人、ひょっとすると発達障害では?」と疑ってみたりもします。「自閉症スペクトラム(ASD)」とか、「アスペルガー症候群」とか、「ADHD」といった発達障害に関連する医学用語を目にする機会が増え、生半可な知識が知らず知らずのうちに頭に入ってしまっているからでしょう。
文春新書の「発達障害」(岩波明著)。昨年発売されるとベストセラーになって版を重ねています。先週この本を読んで、考えを改めました。「発達障害みたいな人がたくさんいるけど、本当の発達障害は少ない」というのが、素人なりにこの本から得た結論です。発達障害の診断基準は厳格で、それに近い行動をとる人が必ずしも発達障害であるとは限らないということが理解でしました。知ったかぶりは差別を生む要因となることを実感させられたのであります。

○○○○の父

個性的な製品には、その開発者をリスペクトを込めて「○○○○の父」などと呼ぶことがあります。かつては「ウォークマンの父」大曽根幸三氏とか、「日産スカイラインの父」桜井眞一郎氏、日産にはもう一人「フェアレディZの父」片山豊氏もいました。
今日の朝日新聞に、「『ペッパーの父は孫正義ただ一人』 ソフトバンクが要請」という見出しの記事がありました。
https://digital.asahi.com/articles/ASL1R4WFQL1RULFA022.html
以前、ソフトバンクが開発リーダーとして発表していた某氏が、2015年に退社して別のロボット会社を設立したそうで、「広報担当者は23日、『リーダーという当時の紹介は誤りだった。おわびして訂正する』と話した」とのこと。「孫正義ではなく社外の人間が『ペッパーの父』とされることは、今後のブランド戦略上問題がある」のだそうです。また、某氏は「ペッパーの企画や技術開発等、いかなる点においても主導的役割を果たしたり、特許を発明したりした事実はない」のだそうで、「ロボット事業参入はソフトバンクの孫氏が決め、ペッパーのデザインや声、世界観なども様々な案の中から孫氏が決めた」のだとか。
まあ、経営者は自分の意向も強く反映させ、決裁もしたでしょうから、その通りかもしれませんが・・・。
某氏の方も「自ら『ペッパーの父だ』などと自己紹介したことはなく、父だと主張するつもりもない」のだそうです。
なんか大人げないなあ。こんな要請は企業イメージの毀損につながらないかなあ。ワンマンの典型だなあ。だれか忖度したのかなあ。こんな発表をさせられる広報の方もつらいだろうなあ・・・いろいろな思いが気分を暗くさせます。

このあたりが潮目か、週刊文春

文春砲などと呼ばれて、政治家や有名人から怖れられていた週刊文春にも潮目が来たかもしれません。小室哲哉氏のいわゆる不倫報道と、それに関連した本人の引退発表に対する社会の反応は、これまでとは大きく違います。
従来は、切れ味の鈍いレガシーメディアに対して、強烈なインパクトのある週刊文春の報道に多くの人々が支持を与えてきましたが、今回は矛先が文春の方に向けられています。返り血を浴びてしまいました。
その要因は、小室氏が有名人であっても私人であること。その私人のプライバシーを暴くことへの疑問。多くの音楽フアンが小室氏の才能を評価していたこと。夫人の重篤な病状とそれに対する小室氏の一定の介護と献身が認められていたこと。記者会見での小室氏の真摯な態度と明らかな疲労感。それらによって、介護をする人の苦労や孤独感に対して介護経験を持つ人たちからの共感が得られたこと等々。週刊文春の読者と、その二次情報を得た人たちにとって、今回の報道には「正義」が感じられなかったのでしょう。
文春砲への支持が失われ、影響力が殺がれることを一番喜んでいるのは、時の権力かもしれません。惜しいことをしましたね、週刊文春は。自爆してしまっては何にもなりません。

通じませんよ

広報のお手伝いをする仕事をしていると、当然のことながらさまざまな会社と出会います。一緒にお仕事をさせていただいて、とても気持よくスムーズにコトが運んだという会社はあまりなくて、やりにくいなあと感じながらも一生懸命お手伝いをして、その会社が求めるアウトプットが得られたら、それで100点と考えるべきだと思っています。そういう仕事なんですから。
いつも依頼を受ける広報セミナーのスライドの中に「 PR会社が、“やってらんない”クライアント 」という1枚を入れていたのですが、考えてみれば少々傲慢かなと反省して、次回から抜くことにしました。
しかし、一つだけここに書き残しておきます。それは広報に無知なクライアントさんとは仕事がしにくい、ということです。少なくとも広報活動、たとえば記者会見をしたいとかプレスセミナーをしたいとかお考えになるなら、広報の基本くらいはご存じでいていただきたいと切に思います。
広報についての知識をお持ちでない企業さんに共通するリスクがあります。それはジコチューになりやすいことです。自分たちの考えがそのまま世の中でも通じると考える会社が多いのです。それこそ広報の真逆のスタンスであることは、いまさらここで言うまでもありません。