「丁寧に説明したい」

近頃、あちこちで「丁寧に説明したい」というフレーズを見かけるようになりました。その端緒は国会の政府答弁なのでしょうが、これは一時の逃げ口上で、実際には少しも丁寧でないとは、誰もが感じるところです。
・・・と思いながら、電子辞書の広辞林を引いてみたら、「(1)注意深く念入りであること。細かい点にまで注意の行き届いていること。また,そのさま。(2)動作や言葉遣いが,礼儀正しく,心がこもっている・こと(さま)。(3)何度も繰り返すこと。特に何度も忠告すること。(4)文法で,話し手が聞き手に対して直接に敬意を表現する言い方。→丁寧語(一部省略)」となっていました。
これを政府答弁その他に当てはめると、どうやら(3)の意味でお使いになっているのではないか、と思い当たりました。何度も何度も同じことを繰り返している(新事実が出てくるたびに少しずつ修正されていますが)。なるほど。確かに「丁寧に説明して」いるのに相違ありません。

日大アメフト部問題から目が離せません

政治の世界の方がより深刻ではあるのですが、広報の人間としては日大アメフト部の問題から目を離せません。広報の歴史に残る出来事がこんなにつぎつぎに起こるなんて、めったにないことですから。
本質的な問題については各メディアで論じられていますし、ツイッターなどでもいろいろな指摘がありますので、ここで書くまでもありません。
興味深いのは、関学と日大の広報のあり方です。記者会見で記者と議論してしまった司会の日大広報部顧問氏も、冷静な受け答えをしていた関学のディレクター氏もどちらも記者出身だと報じられています。
前にも書きましたが、企業(団体)の広報でメディア出身者が成功した例は少ないと思います。企業とメディアとの間には深くて、暗いかどうかは知りませんが、越えがたい川が存在します。企業内での広報の役割や活動は、メディア側にいては見えにくいのです。さらに、記者という職業に長く携わっていると、アタマを下げるのが苦手になるようです。権威にアタマを下げていては記者は務まりませんから。メディアで活躍し請われて企業の広報に入ったら、一から広報の基本を学ぶことなどプライドが許さないでしょう。その典型が日大顧問氏のように見えました。関学ディレクター氏は希有な存在なのかもしれません。

ウソをつくことは得なのか?

世の中、ウソつきが多いのだなあと、このところつくづく思い知らされます。
広報の仕事をしていると、なんとかコトを大きくしないように計らったり、アドバイスしたりはしますが、「ウソはいけません」ということは一貫しているつもりです。ウソはいつかばれる日が来ます。それが明日だったり50年後だったりするだけのことです。
危機に際しては、自分の身や自分の利益を守ろうとすればするほど、身を滅ぼしたり大きなダメージを受けたりする確率が高くなることが経験則からわかっています。本気で身を捨てるつもりになることで身が守られる確率は決して少なくはありません。しかし、すべてを失う確率の方もまた少なくありません。どちらをとるか。
人間の尊厳とか名誉とか品格とか、そのような要素を加味しようとすれば、ウソはつかない、過去のウソは撤回して謝る、自分を守ろうとしない・・・という選択になります。今後の利益が守られるなら、そんな要素はどうでもよいと考えるならば、ウソを貫くのも一つの選択肢ではあります。ただし、それが成功する確率も100%ではないのが悩ましいところです。

と書いたところで、反則を犯した日大アメリカンフットボール部の選手の記者会見が始まりました。近頃まれに見る謝罪会見の成功例です。誰が見てもウソを言っているようには思えないでしょう。関西学院大学の監督も敬意を表するとコメントしました。彼の前途が開けますように、と願わずにいられません。

7-38-55で負けでしょう

発したメッセージ内容とは異なる表情や態度を示した場合、話の内容などの言語情報から受ける影響は7%に過ぎず、声のトーンなどの聴覚情報による影響が38%、表情など非言語の視覚情報によるもの55%だというのが、メラビアン(またはマレービアン)の法則と言われるものだそうです。「そうです」と伝聞で書いたのは、原著を読んだことがなくWikiを読んだだけだからです。原著の翻訳は古書で5000円もするのです。
広報に関係している人の中にも、この説を曲解したメラビアンの俗説”を信じている人が少なくありません。「人は見た目が9割」などという本がその代表で、説明は省略しますが、皮肉なことにこちらの本は読んだことがあります。
こんなことを思い出したのは、このところ国会の証人喚問や参考人招致、さらに政府の答弁などをニュースで繰り返し見るからです。確かに証人や参考人や政府関係者は上手に言い逃れています。しかし、それらの中継やニュースを見ている国民は、せっかく知恵を絞って練り上げた答弁という言語情報からは7%しか影響を受けないことになります。これはどうにも政府側の分が悪い。ではないですかね。