記者の専売特許

なぜ新聞記者は文章読本を書きたがるのだろうと、先週書きました。答えは簡単です。「自分は文章がうまい」と自負しているからです。
その正否はともかくとして、新聞記事が、素人の作文のお手本に好適であることは認めざるを得ません。それだから、記事の書き手による文章読本にはそれなりの需要が見込めるということになるのでしょう。本を書かないまでも、退職後に大学教員に転身して、作文指導をしているOBも少なくありません。
しかし、実は新聞記者たち自身が気づいていない専売特許はほかにあるのです。それは取材力というものです。
新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4大マスメディアの中で、最も分厚い取材組織と取材ノウハウを有しているのが新聞社です。新聞の退潮が誰の目にも明らかになってしまった現在においても、これは変わりません。
フリーのライターさんからは、新聞の取材力に批判的な意見も聞かれます。それもある面で正しいとは思いますし、独自の取材力を持つフリーライターが少なくないことは承知していますが、新聞社で先輩から後輩へと受け継がれる取材ノウハウや取材力はいまだ侮れない水準にあるのは確かです。
優れた文章は、テニオハの使い方だけで書けるものではなく、そこに盛り込まれる視点や情報の質に負うところが大きいわけで、それは取材力から生まれます。取材力は情報収集力と言い換えてもよいでしょう。
ビジネスの世界でも、学問の世界でも、広報の世界でも、取材力のある人とそうでない人では、企画やアプローチの仕方に大きな違いが生じるはずです。これこそ新聞記者OBのみなさんから伝授していただきたいノウハウだと思うのです。〈kimi〉
 

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