品行方正とか聖人君子とか、そんな形容とはおよそ縁なき衆生であるのは言うまでもないことですが、追い打ちをかけるように「これでもか」と思い知らされるような出来事にたびたび遭遇します。いずれも非はこちらにあるので、ごめんなさいとしか言いようがありません。
その1。本屋で叱られました。
棚の本を取り出すとき、何気なく鞄を平置きされている売りものの書籍の上に置いていました。店員さんではありません。お客さんに叱られました。「もしもし」と言ってあとは無言。人差し指が私の鞄を指していました。実は、その後にもう一回、続けざまに同様の注意を受けてしまいました。これもお客さんからのご注意です。そこで気づかされたのは、子どもの頃から立ち読みをするときは本の上に鞄を置いていたなあ、ということです。それで何十年間も注意を受けたことがなかったのに、いまになってなぜ立て続けに…と実に不思議な思いがしました。世の中の倫理観のハードルが高くなったのでしょうか。いずれにしても商品が傷つくようなことをしてはいけません。以後、鞄を置かないように注意しております。
その2。電車の中で叱られました。
何年か前に大病をしました。回復には時間がかかり、体調にいろいろおかしな現象が現れました。喉が異常に渇くというのもその一つで、外出時にはペットボトルを手放せなくなりました。その頃のことです。地下鉄でペットボトルのお茶を飲んでいたら、オバサンに叱られました。どんな言い方をされたか忘れましたが、電車の中で飲み食いするのはお行儀が悪いといった趣旨でした。誠にごもっともです。しかし、私には切実な理由があります。そこで言い訳を申し上げたのですが、まったく聞く耳持たずでした。お見受けしたところ、少々執着が強いご性格と拝察しました。叱られっぱなしの状態で次の駅に到着したところ、あっさり降りて、今度は反対方向の電車に乗り込んで行かれました。きっと行ったり来たりしながら車内で飲み食いしている人を探しているに違いない。一緒にいた後輩はそう推測したのですが、真実は不明です。
その3。また電車の中で叱られました。
これはつい最近のことです。休日にガラガラに空いた電車に乗りました。そうだ、いまちょうどクライマックスシリーズで阪神対広島戦をやっているなあ、と思いつきました。同時に、スマホでラジオが聞けったっけな、ということも思い出しました。そこでスマホを取り出してイヤフォーンを耳に押し込もうとした、その時です。「携帯はいかんのじゃないですか。あれが読めんですかあ」と隣のご年配の方に注意されました。優先席に座ったことをすっかり忘れていました。「携帯はペースメーカーに影響ないという話もある。しかし、決められたことは守らなくてはならぬ。私たちのような年の者は若い者の模範にならねばならぬ」というのがお叱りの内容でありました。年寄り組に入れられたことには若干の異論はあるものの、これまたごもっとも。いまさら普通のシートに移るのもナンだしなあ、などと居心地悪く座っているうちにターミナル駅に着きました。先に席を立ったご年配が振り返って一言、「失礼しました」。完全にこちらの負け。後で阪神も大負けしたことを知りました。〈kimi〉