「彼女の発言、テープに取っておいてよ」などと何気なく言ってしまいますが、録音にテープに使わなくなってすでに久しい。それでも「テープ」と言ってしまうのは、録音はテープにするものだ、と頭にしみ込んでしまっているからでしょう。
先日、ご高齢のジャーナリストの方々とお話していたら、いまもってカセットレコーダーを使用しているとのこと。テープは回っているのが見えるから安心なんだ、というのが愛用の理由だそうです。その気持はよくわかります。メモリーは見えません。「テープを回す」がいまも通じるのは、案外そんな理由なのかもしれません。
そう言えば、と思い出したことがあります。いずれもよく知られている事例なのですが・・・。
80年代くらいまでは「コピーとってください」とは言いませんでした。「これ、ゼロックスしておいて」がふつうでした。その頃はゼロックスが圧倒的なシェアを持っていましたが、その後他社もシェアを伸ばしたので、「ゼロックス」はコピーの代名詞ではなくなってしまいました。
もう一つ、「スリーエム」というのを思い出しました。スコッチテープやポストイットの3M社のことです。米国人や米国かぶれをした人たちが、オーバーヘッドプロジェクターをそう呼んでいました。「オーバーヘッドプロジェクター」では長すぎます。その後は「OHP」という略語が一般的になっていました。3M社は、装置もさることながら、OHPシートが大きなビジネスになっていたようです。いまや企業ではほとんど見かけなくなりましたが、大学などではしぶとく生き残っているようです。
「ホッチキス」も似た運命をたどりつつあるのだろうと思ったら、これはもう普通名詞になっていて、NHKも「ホッチキス」と言っているんだとか。ステープラーなんて言うとちょっとキザに聞こえますね。
このほか味の素、シャープペンシル、セロテープ、エレクトーン、ウォークマン、バンドエイド、万歩計、宅急便などの例が思い浮かびます。いまも代名詞化が現在進行形で進んでいる商品があるに違いありません。それは何か。オリジナリティーが高く、圧倒的シェアを占めつつある商品を探しているのですが、どうにも思いつきません。〈kimi〉