効果測定の原則に関するバルセロナ宣言


広報活動の効果測定ほど広報担当者の頭を悩ませるものはありません。
現代の企業では、個々の企業活動がどのような結果をもたらしたのかを必ず評価することが求められます。投資効果、投資利益率、投下資本利益率、投下資本収益率、費用対効果、ROIなど種々の用語が使われますが、要するに「やっただけの効果があったのか」、「金を使っただけの見返りはあったのか」を評価して報告しなくてはなりません。そのような評価をもとに次の施策へとつなげて行く、いわゆるPDCAサイクルを回すことで企業の成長、発展が実現されるという考え方です。
ところが広報活動の効果測定には、普遍的な方法論が確立していません。世の中には、これこそが効果測定の決め手でもあるかのようなさまざまな手法が並び立ってはいるものの、どの企業にも、どのPRキャンペーンにも適応できる評価方法は未だ存在しない、と断言できます。言い換えれば、誰もが納得でき、比較対照でき得る普遍的な指標、KPIは確立していないということです。
そのような状況の中で、メディアやコミュニケーションの調査・評価に関する国際機関で英国に本部のあるAMEC(International association for the measurement and evaluation of communication)と、米国の非営利広報研究機関であるIPR(The Institute for Public Relations)が、2010年6月にスペインのバルセロナで開催した「効果測定に関する欧州サミット(2nd European Summit on Measurement)」において発表した「効果測定の原則に関するバルセロナ宣言」(Barcelona Declaration of Measurement Principles)は、企業の広報担当者や広報業界に大きな示唆を与えるものと考えられます。
この宣言は、すでにどこかでどなたかが日本語に訳されておられるのだろうと思いますが、ネット上では発見することができませんでした。
そこで弊社で拙い日本語訳を試みましたので、ここにご紹介いたします。正直に申しますと、宣言が言わんとするところを完全に理解し得ない部分もありましたので、ご意見やご指摘をいただければ幸いです。
なお、コピペはご自由ですが、その際は必ず「株式会社ココノッツ訳」とのクレジットを入れてください。
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 効果測定の原則に関するバルセロナ宣言

 

AMEC & IPR(第2回効果測定に関する欧州サミット 2010年6月)

 

 広報の効果測定に関する7つの原則

1.目標設定と効果測定は重要である
2.アウトプット(露出)の測定より、アウトカム(成果)への効果を測定する方が望ましい
3.業績への効果は測定可能であり、可能なかぎり測定すべきである
4.媒体における効果測定には、量と質が求められる
5.広告費換算(AVEs)は、広報活動の価値ではない
6.ソーシャルメディアは測定可能であり、測定されるべきである
7.信頼できる測定には透明性と再現性が最も重要である


原則1.目標設定と効果測定は重要である

●目標設定と効果測定はあらゆる広報活動における基本である
●目標は可能な限り定量的であるべきで、そのPR計画には、誰に、何を、いつ、どの程度影響を与えることを意図したものかを明確にすべきである
●効果測定は、主要なステークホルダーによる認知、理解、態度、習慣行動における変化や業績への効果について、代表的な既存メディアとソーシャルメディアを含め、総括的にアプローチすべきである


原則2.アウトプット(露出)の測定より、アウトカム(成果)への効果を測定する方が望ましい

●アウトカム(露出)とは企業、NGO、行政あるいは事業体のステークホルダーにおける購買、寄付、ブランド資産、企業評価、労使関係、政策、投資決定に関わる認知や理解、態度、習慣などの変化のことであり、ステークホルダー自身の信念や習慣の変化も含まれる
●アウトカム(成果)に対する影響を測定する際は、広報活動の業務目的に合わせて調整が必要である。ベンチマークや追跡調査のような定量的な測定が適している場合が多い。しかし、定性的な手法がうまく適合することもあり、定量的な測定を補完するために使うこともできる
●標準的で最良の調査研究というものは、標本設計、設問の表現や順番、統計分析などすべてを通して透明性が保たれるべきである


原則3.業績への効果は測定可能であり、 可能なかぎり測定すべきである

●売上やそのほかのビジネス指標に対して、PRによる露出の質と量がどれほど影響したかを測定するモデルは、他の変数に影響されるとは言え、商品マーケティングやブランドマーケティングから得られた業績を測定するために推奨できる選択である。
関連するポイントは:
・クライアントでは、商品マーケティングへの効果を評価するマーケティングミックスモデル分析の必要性が生まれている
・PR業界は、他の測定アプローチとは異なるが、商品マーケティングPRを正確に評価するために、マーケティングミックスモデル分析の価値と意味を理解する必要がある
・PR業界は、マーケティングミックスモデル分析に信頼のおける情報を提供するようなPRの効果測定法を開発する必要がある
・調査研究はまた、広報的取り組みへの接触による、購買や購買嗜好や態度などの変化を抽出するのに利用できる


原則4.媒体における効果測定には、量と質が求められる

記事のクリッピング数や露出件数の計測はたいてい意味がない。その代わり、媒体における効果測定は既成メディアでもインターネットでも、以下の評価を行うべきである
●ステークホルダーや購読者・視聴者への露出件数
●以下を含む報道の質

論調(トーン)
ステークホルダーや購読者・視聴者に対するその媒体の信頼性と関連性
伝えられたメッセージ
第三者や企業のスポークスパーソンの登場
その媒体の適切な知名度

●質は、ネガティブ、ポジティブ、ニュートラルのいずれかになり得る


原則5.広告費換算(AVEs)は、広報活動の価値ではない

●広告費換算(AVEs)は広報活動の価値を測定するものではなく、将来の活動の参考になるものでもない。それらは、媒体のスペース料金を測っているのであり、広報の価値を測るという概念としては受け入れられない
●広告料を必要とするスペースと広告料を必要としないスペースのコストを比較する際には、目的を明確にし、以下の項目を反映した正当な評価方法を用いるべきである
・できる限り、その広告主に適用される個別の広告料金
・ネガティブな結果を含む報道の質(原則2を参照)
・報道された実際のスペース、そしてそれに関連した報道の量
●広告料を必要とするメディアに対し、広告料を必要としないメディアのスペース料金をより大きく見せようとすることは、特殊なケースで証明されている場合を除いては、決してすべきではない


原則6.ソーシャルメディアは測定可能であり、測定されるべきである

●ソーシャルメディアの効果測定は原則のようなもので、手法といったものではない。すなわち、単一の測定基準は存在しない
●組織は、ソーシャルメディアの目標や成果(アウトカム)を明確に定義する必要がある
●コンテンツの分析は、web検索の分析、売上、CRM(Customer Relationship Management)データ、調査データ、その他の方法で補完されるべきである
●伝統的なメディア同様、質と量の評価が重要である
●効果測定は、単なる“カバレッジ”だけではなく、“会話”と“コミュニティ”を重視しなければならない
●リーチとインフルエンスを理解することは重要であるが、情報源に遡及することができなかったり、十分に信頼できる透明性や一貫性がないことがあるので、実験やテストが成功の鍵となる


原則7.信頼できる測定には透明性と再現可能性が最も重要である

PRの測定はプロセスのすべての段階で、以下に特記したように、透明性と再現可能性のある方法で行われるべきである。
媒体測定
●コンテンツ(印刷物、報道、インターネット、消費者発信型メディア)の発信元とその収集基準
●分析手法 - 人間の手によるものか機械によるものか、トーンの尺度、ターゲットへのリーチ、コンテンツ分析のパラメーターなど
調査
●方法論 - 標本の抽出枠と大きさ、許容標本誤差、確率標本抽出法あるいは非確率標本抽出法
●設問 - 言葉遣い、順番など、すべて質問された通りに公表すべき
●統計手法 - どれくらい特異的な測定基準で計算されるか


株式会社ココノッツ訳 ©2014, CocoKnots Inc.                〈kimi〉
 

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