写真のセンス、天性なのか努力の賜なのかわかりませんが、確かにセンスのよい人がいます。いい瞬間を撮るとか、いい構図で撮るとか、面白いものを見つけて撮るとか、そのようなことを全部ひっくるめてのセンスなんでしょう。
知り合いのアマチュアカメラマンは花火の写真にかけては名人です。独自の技巧を駆使した色鮮やかな花火の写真は、展覧会などでも多くの人たちを魅了します。新型コロナで各地の花火大会が中止になると、ダイヤモンド富士なるものに挑戦し始めました。富士山の真上に太陽が昇る、あるいは沈む瞬間を撮ろうというものです。さまざまな場所と方角からその一瞬を狙います。なかなかに美しい。ところがその人、街角の状景などを撮るとからきしダメでなんです。大量にシャッターを切りますが、ほとんどがゴミです。どうしてそうなるのか、と考えてようやく一つの結論に達しました。
花火もダイヤモンド富士もそれ自体が美しい。そこに技術は必要だとしても、美しさは向こうからやって来ます。
街角のスナップ写真はそうは行きません。それほど美しくも面白くもない風景の中から、興味をひく一瞬や面白い状景を、自分で見つけ出さなければなりません。
広報の仕事にも同じような問題がありそうです。世の中が沸き立つ要素をもともと持っている製品やテーマがある一方、これはまいった、と言いたくなるような地味で面白みの少ないテーマもあります。それをどのように広報活動に結びつけたらよいのか。「面白さ」はいつも向こうからやってくるわけではありません。地味なテーマや専門的な製品の中に面白さや素晴らしさや社会の利益になるポイントを自分たちで見つけ出す。これですよね、大切なのは。