なかなか

日常的で何気ない言葉が、ある人には特別な感情や思いを喚起させるといったことがあるようです。過去の体験、エピソードなどによって一度色づけされてしまった言葉は、もう何気ない言葉などではなくなってしまいます。私にとっては、「なかなか」という言葉がその一つ。若き日、先輩社員の口癖でした。その人は、
「あの部長はなかなかだからねえ」
というふうに使っていました。
その時の口調をいまでも鮮明に思い出しますが、なんだかわかるようでわからない。想像するに、「なかなか手強い」とか「なかなか言うことを聞いてもらえない」といった含意のようで、そこに「ちょっと普通ではない」といったニュアンスが加わっているようにも感じられました。言っている本人もどう表現してよいのかわからずに「なかなか」を使っていたのかもしれません。あるいは明確に表現するのをはばかっていたのかもしれません。

辞書の「なかなか」の項には次のように書かれています。
1.なかほど。半途。中途。
2.不徹底・不十分な状態、もしくは過度の状態が、逆に不満をかき立てること。
3.逆の状況や意味をもたらすこと。かえって。
4.かなりの程度であるさま。ずいぶん。相当に。「―のものだ」
5.(否定の語を伴う)簡単には。すぐには。

狂言で太郎冠者が「なかなか」と返事をすると、打ち消す意味で「とてもそうはなりません」だったり、「いかにもその通り」といった意味になるそうです。どうにも中途半端な表現ですね。

 何ごともなかなかのまま年暮るる

よいお年を。

Facebookと天然うなぎ

47都道府県のうち足を踏み入れていない県が2つ残っていました。高知県と大分県。海外へ行ける機会は今後あるかどうかわからないので、新型コロナがスキを見せている間に、こちらの方をつぶそうと思い立ち、高知県に行ってきました。
ここ何週間か、高知ばかりでなく四国4県で新型コロナの感染者ゼロが続いています。
新型コロナウイルスはヒト*に感染しなければ存在できない⇒高知では感染者がゼロ⇒高知には新型コロナウイルスは存在しない、という怪しげな三段論法で安全に旅行ができると信じることにしました。*ネコにも感染するそうです。
高知へ行ったら訪れてみたいと思っていたのは四万十川です。鮎の友釣りを趣味としていた若いとき、四万十川で鮎を釣るのが夢でしたが叶いませんでした。いまとなっては友釣りよりもうなぎです。四万十川でとれた(たぶん)天然うなぎの蒲焼きが食べられるという店へ直行しました。
帰京してから、この写真をFacebookのうなぎ好きのグループに投稿してみました。すると、あれよあれよという間に380もの「いいね」がつきました。これまでFacebookでいただいた「いいね」の最多数です。うなぎ好きの人たちにとって、四万十川の天然うなぎの蒲焼きは一つの憧れなのでしょう。
では、その味はいかがであったか。それはこれから四万十川に訪れる方々のお楽しみとしておきましょう。ちなみに、ことわざに「名物にうまいものなし」というのがありますが、写真とは関係ありません。