「なぜこれをくださるのですか」

学校を出てからずっと会社勤め。自分で会社を興しても会社勤めには違いありません。カッコよく言えば“ビジネス社会で生きて来た”ということになりますが、そういう自覚はありませんでした。
ところが今年、居住地域の活動に引き込まれてしまって、それを思いっきり自覚させられることになりました。
そのモロモロはいずれ書くとして、先日はこどものためのミニ縁日と地域住民の作品展が開催され、作品展の係を命じられました。写真展の経験は何回もあるのでお安い御用です。
店開きをして間もなく、一人の高齢婦人がお越しになりました。そして氏名・住所・電話番号だけが印刷されたシンプルな名刺を差し出されました。こちらは名刺の用意などありません。すると小さなカードを差し出され、ここに住所と名前を書けとおっしゃる。すぐご近所ですから、逃げも隠れもできません。ご要望通りにいたしました。
2、3時間後のこと、その高齢婦人がペットボトルに詰めたお手製のコーヒーを差し入れてくださいました。一口飲んだらその甘いこと甘いこと。
その日の夕方、件の高齢婦人が自宅を訪ねてこられました。お手製の料理を冷凍保存したもの2品お持ちくださったのです。ありがたいことです。なんでも資格をお持ちだとか。何の資格かは聞き漏らしましたが。
何はともあれお気持は誠にありがたいものの・・・。


10月9日付毎日新聞のコラム「松尾貴史のちょっと違和感」にこんな記述を見つけました。
「差し入れといえば『なぜこれをくださるのですか』と聞きたくなる物を持ってこられる人もいる。いや、善意をもらっておいて不平があるわけではないのだけれど、もったいないなあと感じることが、ままあるのだ。
 ファンの方による手作りの食べ物は、いかに心がこもっている物でも、出演者に届けられることはまずない。もちろん、安全上の問題だけれども、たとえ直接『人柄の良さそうな』方に楽屋口などで手渡されても、それを口にするということはない。」