インフルエンザの季節がようやく過ぎようとしています。と思ったらスギ花粉がもうやって来ました。なんともうとましき季節ではありますが、そのようなこの季節に、私はうるわしき一つの真理を発見したのでした。
毎日、通勤電車の中で、この真理を補強すべき傍証の数々を発見しております。ひょっとすると世界的発見かもしれません。
その真理とは「この季節には美人が増える」というものです。
インフルエンザや花粉症の予防のために、この季節にはマスクをしている人がぐっと増えます。マスクをしていると、目から上だけが衆目に晒されることになります。その眉毛とまつ毛と目との三点セットにおいて、実に美しい方が多いのです。そう思いませんか。
ある日の電車の中で見つけた女性など、名人の筆を思わせる整った眉、ナチュラルな長いまつ毛とくっきりしたアイライン、黒眼がちの憂いに満ちた眼差し。実に美しい。すっかり魅せられてしまいました。彼女が降りる駅までずっとお付き合いしたいと思ったくらいです。こんなことを書くとスケベオヤジそのもののようですが、美しいものは断固美しいのです。もちろんストーカーに間違われそうなことはせず、清く正しく後ろ髪を引かれる思いで、途中下車いたしました。
これは一体どういうことでしょうか。顔を構成している主な構造物には、上からオデコ、眉、まつ毛、目、鼻、口、唇、歯、アゴがありますが、目から上の構造物だけを見せると美人に見える確率が高くなる。ということは、鼻から下の構造物を晒すと「それなり」になりがち、ということにもなります。
ここでフェミニストやセクハラ撲滅運動に従事しておられるみなさまに、一言エクスキューズして置く必要がありそうです。私は決して誰が美人で、誰が「それなり」といった特定の方のことを申し上げているのではございません。あくまでも真理の追求が目的であります。
話を戻します。
美人か「それなり」かという人生を左右する大問題については、オデコ、眉、まつ毛、目よりも、鼻、口、歯、アゴにより大きな責任がある、ということになります。
なぜそうなるのか? 一つの仮説は、目から上の構造物は動きが少ないということです。それに比して、鼻から下の構造物は可動性が高い。動くとボロを出しやすいのかもしれません。
もう一つの仮説は、上に比べて下の方が可塑性が高いというものです。つまり、いろんな形が可能になるということです。いろんな形がつくれると、それだけ失敗確率が高くなると考えられます。
例えば歯です。出っ歯、受け口、乱ぐい、虫喰い、変色などなど、形がさまざまで、それが上がったり下がったり、むき出しになったり、隠れたり。ここに唇という可動性と可塑性にとくに優れた構造物がからむのですから、これらを用いて美を表現するのは極めて困難になります。
そこへ行くと目は、多少の大小、上がり下がり、一重二重等々はあるものの、大きく形態が変わることは少ないと言えるでしょう。動きと言えば、開けるか閉めるかしかありません。これは失敗のリスクが少ない。
と、こんなロジックをもって、マスクの季節には美人が増える、という真理の追求をしてみました。
もちろん例外も少なくありません。また、この真理は男性にはまったく当てはまらないようです。その理由はいまのところ定かではありません。〈kimi〉