麻生首相が記者会見の演台に上がるとき、軽く一礼するのにお気づきですか。
プロ野球の選手でバッターボックスに入るときに一礼する人がいます。高校野球では必ず審判に「お願いします」と頭を下げるのが慣習になっているようで、プロになってもその習慣が抜けないのでしょう。柔道家も畳に上るときには必ず一礼します。サッカー選手の場合は、フィールドを出るときに、わざわざ振り返って一礼する姿をよく見かけますが、これは日本選手に限られるようです。戦ったフィールドとサポーターに対する敬意なのでしょう。悪いことではありません。
さて、麻生首相ですが、彼は一体何に頭を下げているのでしょう。会見場には国旗が掲げられていることが多いので、国旗に対してだろうと思っていたら、赤い緞帳を背にした解散時の記者会見では、国旗がなくても一礼して演台に上がっていました。こうなると解釈が難しい。スポーツ選手のように記者会見という神聖な勝負の場に対して敬意を表している、とも考えられますが、日頃の首相の言動を拝見している限り、どうもそうではなさそうです。
ある企業経営者は、社員を集めたセレモニーの場で、麻生さん同様、演台に上がるときに深々と一礼をします。演台のバックには国旗ではなく社旗が掲げられています。つまり社旗に頭を下げているわけですが、これって、ちょっと変ではありませんか。社旗って、ロゴマークを刺繍したただの旗です。そこに何か「神聖」っぽい意味づけをしようとしているとしたら、いかにも日本的な風景と言えます。
首相が一礼すべきは国民に対してであって、経営者が一礼すべきは業績を支えている社員に対してではないか。私は、そう思うのですがね。〈kimi〉