小さいながらも事務所を構えていると、テレマーケティングの電話が日に二度や三度はかかってきます。保険会社、証券会社、人材紹介、インターネット電話、不動産投資、リゾートマンション・・・実にさまざまですが、これらの電話の冒頭に発せられる共通の常套句があります。
「いつも大変お世話になっております」
がそれです。
セールスプロモーションですからすべて初対面、いや初電話の人たちです。そんな相手から「いつもお世話になっております」なんて言われるの、気色悪くないですか。
なので、ときどき「あなたをお世話した覚えはありませんが」と切り返します。嫌なヤツ!と思われるに違いありませんが、実際にお世話をしたことがないのだから仕方がありません。
ワープロソフトを使っていると、「拝啓」と打った瞬間、
早春の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
などの常套句が出てくることがあります。あえて本音を言えば、オタクの会社が儲かろうと損を出そうとこちらにはとくに関係はないし、また大してご高配をいただいた覚えもない。それなのにこんな白々しいことを書くのは、こちらも気色が悪いし、相手も気色が悪かろうと思うのです。
そこで、そのような自動機能が働かないように設定しているのですが、さて、それに代わる気の利いた、かつ心のままの挨拶が書けるかと言えば、容易に思いつくものではありません。無精を決め込みつつ、相手に「常識のないヤツだ」と思われないようにするために、これはなかなか便利な機能である、と認めないわけには行かないところが、これまたなんとも気色が悪いのであります。〈kimi〉