人それぞれではありますが

DenshaAruku
毎朝、ラッシュのピークからやや過ぎた時間帯に地下鉄に乗っています。吊革の半分ほどに乗客がつかまっている程度の混み方です。そこにときどき車両を移動する人が現れます。降車駅の階段に近いドアに移って定時前に会社に滑り込みたいという心理は、長年会社勤めをした経験からは十分理解できるところですが、その程度の混み具合ですと、立っている乗客の身体に触れたり少々押しのけたりすることは避けられません。立ちながら読書をしたりスマホを使ったりしている乗客にとっては決して気分のよいものではないでしょう。
その地下鉄がある駅とある駅の間を走っているとき、毎日必ず乗客を押しのけるように車両を移動して行く男性がいることに、ある日気がつきました。同一人物です。堅気の仕事をしているような風体です。きっと乗る駅の階段と降りる駅の階段が離れているのだろうと、初めは考えました。ところが、ある日は前から後へ、またある日は後から前へと日によって移動方向が異なるのです。目的は明らかにほかにありそうです。
その目的がわかったのはつい先頃です。乗客をかき分けながら網棚の上の所有者不明の雑誌にひょいと手を伸ばしたのです。翌日からよく観察していると、歩きながらチラリチラリと網棚に目をやっていることが確認できました。
週刊誌の価格はいま350円から400円。新聞の駅売りは110円から160円ほど。その出費を惜しむが故に毎朝10輌編成の端から端まで人をかき分けながら、迷惑がられながら、さらに奇異な目で見られながら捨てられた雑誌や新聞を求めて歩いているのだとしたら・・・。人それぞれ。価値観の多様性は認めるところではありますがねえ。〈kimi〉

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