製薬協が京大大学院でやっていた寄付講座「医薬産業政策学」のシンポジウムが先週、丸ビルで行われました。知人に誘われて初めて行ってみたのですが、今年度で寄付講座が終了するために、シンポジウムも今回が最後なのだとか。高額医薬品と財源が今年のテーマでした。
盛りだくさんのプログラム内容はさておき、主催者である教授が最後に発した言葉が誠に印象的でした。「毎年シンポジウムを開いてきたが、参加者は製薬会社の人ばかりで残念だった」。
当たり前です。一部のジャーナリストを除いて、製薬業界以外にシンポジウムの開催を知る人がほとんどいないのですから。
医学系ばかりではありませんが、とかくアカデミアや一部の行政の方々は、イベントを開催することだけにほぼすべてのエネルギーを費やして、参加者を集めるための告知の重要性に気づかないケースが少なくありません。また、告知にはそれなりのコストが必要であることの認識にも乏しい。いくら立派なイベントでも、誰も集まらないのでは効果は望めず、単なるマスターベーションに終わってしまいます。
今回のシンポジウムは、製薬業界の人たちばかりとは言え、ほぼ満席でした。それで十分とは言いませんが、嘆くくらいなら、その前に努力しなければならないことがあったのではないですかね。
カブル
2月25~26日は国立大学の入学試験日なのだそうです。福岡では、ちょうどその日に人気グループの大きなコンサートが予定されていて、受験生の宿が不足しているのだとか。そこで西鉄が自社の寮などの宿泊施設を受験生に提供することにした、というニュースがありました。
コンサートの主催者側も、この季節ですから入試スケジュールとかち合わないように配慮してほしいものですが、諸々の事情でそうも行かなかったのでしょう。
地方都市へ出張しようとすると宿がとれないというケースにはしばしば遭遇します。調べてみると医学系の学会が予定されていたりします。その学会に関係していないこちらにとっては大いに迷惑なのですが、これもやむを得ないとあきらめるほかありません。
私たちの仕事では、メディアイベントが他社とカブルという事態にしばしば見舞われます。似たようなメディアイベントが重なると、出席してくださるジャーナリストが分散してしまい、お互いによいことはありません。しかし、日時の決定は主催する企業様のご都合によることが多いので選択の余地がほとんどありません。他社の動向も調べてはいるのですが、同じようなタイミングで案内が出るので避けようがないのが現実です。これを回避するよいアイデアがあればなあ、と考えるのですが、なかなか思いつかないのであります。
人柄で仕事する
キャロライン・ケネディ米大使が離任します。在任中には沖縄の基地移設問題やオスプレイの事故など、米国に対する反感がもっと高まってもおかしくない事件がいろいろありましたが、そうはなりませんでした。日本政府による強引な世論誘導があったとしても、彼女のパーソナリティに負うところも大きかったのではないかと推測します。そういう意味では、日本政府にとってありがたい存在であったばかりでなく、米国政府にとっても成果を挙げた大使だったのではないでしょうか。
同様のことは広報の担当者にも言えます。あの会社にはあの人がいるから、ということでメディアとの関係がとてもうまく行っているという例を、これまでたくさん見て来ました。やり手であるかどうか、有能であるかどうかということよりも、人柄で仕事をする人がたしかにいます。
やりたくない仕事
早口
メディアトレーニングなどでは、できるだけゆっくりお話くださいとお伝えするのですが、緊張すると、なかなかそれが難しいようです。とくに、弁解しなければならないシーンや突っ込んだ質問をされて言い訳したり反論したりしようとすると、無意識に早口になってしまいます。
緊張のほかに、一刻も早くこの苦難を終わらせたいという意識も作用しているのかもしれません。なんとかして自分の言い分を押しつけたい、あるいは反論の余地を与えたくないという気持も影響するでしょう。
限られた時間の中で多くの内容を話したいというときも早口になりますが、早口になればなるほど説得力は低下してしまいます。
今夜、プーチン大統領との会見を終えた首相がテレビ番組に出演しているのを眺めながら、ずいぶん早口だなあと思いました。
オスプレイ墜ちた
世の中の空気
“ネットの医療情報は役に立たない”
昨日行われた「WELQ」問題に関する記者会見の冒頭部分をライブで見ていました。今後DeNAさんがキュレーションメディアをどうするかはさておき、創業者である南場智子会長の発言は聞き捨てならぬものと思いました。日経ビジネス誌によると、その発言は、
「家族の闘病が始まってから(編集注:南場氏は2011年に夫の看病のために社長職を退いた。夫は12月5日に死去した)、ネットを徹底的に調べたが、たとえば『癌に効くキノコ』とかいった話も出てきて、ネットはそれほど役に立たない、信頼できないことがわかった。それ以降、私の情報収集は基本的には論文と、専門家からのレクチャーが中心になった。(ウェルクについて)知ったのは報道があってから。『癌』ということばで検索し、いくつか記事が出てきたときに『いつからこんな医療情報を扱うようになったのか』と愕然とした。」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120700511/?i_cid=nbpnbo_tp&rt=nocnt
ネットビジネスの中心にいる人物が、ネットの医療情報は役に立たないと言いきったわけです。これは、これからの医療分野の広報活動に大きく影響するかもしれません。
NHKの新会長
日本的な集団
仕事柄、若いときから医学関係の学会にはときどき顔を出していましたが、医学研究者ではないので、当然学会員になることはありませんでした。覗いたり、手伝わされたりしただけです。同じく仕事につながる広報領域の二つの学会には、それぞれ創立当初から学会員となり、一時期は理事もやっていました。しかし、このところ少し距離を置いています。
学会員になった目的は、広報の実務に何か役立つだろうと考えたからですが、それは見事に裏切られました。実務とはほとんど関係のない世界でした。また、学会も年を重ねると、顔役とそれ以外の学会員とに分かれてゆきます。顔役は自分の息のかかった若手を取り立てることに熱心になります。政権政党にそっくりです。日本では、どんな集団も日本的になって行くんですね。
なんでこんなことを書く気になったかと言えば、最近送られてきた学会誌に掲載されていた一編がまことにお粗末だったからです(ーー;)。