中央市場が豊洲に移転するのかしないのか、判然としないまま、築地はいま観光客や買い物客であふれかえっています。中国語、韓国語、英語、日本語、なんだかわからない語が飛び交っています。
中央市場の建物はたしかに古い。このままにはしておけそうにないことは素人目にもわかります。しかし、単に市場機能という観点だけで移転をすることがよいのかどうか。
観光客や一般の買い物客たちにとって、築地の魅力は場内、場外の商店街にあります。ここは魚屋さんや板前さんなどのプロの店でありながら、素人も利用できる。そこが普通の街とは異なる魅力です。飲食店も決して安くはないし、具体的にどこが違うのかよくわからぬものの、なんとなく築地独得の雰囲気を持っているような気がします。
とくに場外市場の雑然とした店の並び、迷路のような路地など、もはや他ではほとんど見られないものです。日本の繁華街は次々に再開発という名の整理が行われ、どこへ行っても同じようなチェーン店ばかりが並んでいます。そんな人工的な街にはもう飽き飽きです。もっと自然発生的な、もっと人間くさい、懐かしい街はないか。そんな条件を満たしているのが築地の場外商店街です。
中央市場が豊洲に移転しても場外はそのまま残ると看板が出ていました。しかし、場内と場外は一体です。卸売り市場というバックグランドを失った場外市場は、いまのような活性を失ってしまうのではないでしょうか。
東京に残る貴重な街を守りたいという意味で、私は移転に反対です。〈kimi〉
立食パーティにて
立食パーティで気づいたこと3つ。
1.開会時には会場を埋め尽くしている人たちが、主催者や来賓の挨拶がすむと、潮を引くように少なくなること。義理で出席している人がいかに多いか。中には主催者の挨拶が始まる前に帰る人もいます。受付を済ませればアリバイ成立です。私も一度これをやったことがあります。逆に言えば、最後まで多数の出席者が残っているのがよいパーティということになるのでしょう。義理で最後まで帰れないというパーティも、まれではありますが存在します。
2.会場に知り合いが少ない人ほど早く帰ること。司会者から「しばらくご歓談ください」とアナウンスされると、出席者は一斉に料理のテーブルに向かいます。この時点では目立ちませんが、やがてテーブルごとに会話が弾み始めると、右手にビール、左手に料理の皿を持って、テーブルのない空間に孤立している人たちがポツポツと現れます。ホスト側はこういう人たちを目ざとく見つけて、話しかけるのが心得というものですが、それが徹底されているパーティはほとんどありません。話し相手が見つからない人は孤立に堪えきれず、早々に退散することになります。
3.女性は女性同士で群れたがること。男性の多いパーティでは、会場のところどころに女性の群れができています。女性はおしゃべり名人ですから、孤立することはあまりなさそうに見受けられますが、見知らぬ男性に気軽に声をかけるのはやはり憚られるのでしょうか。
先日、半ば義理で出席したパーティでは、100人ほどの出席者の中に顔見知りはたった二人でした。この二人は大切にしなければなりません。Aさんとは10分ほどおしゃべりしました。しかし、Aさんの表情に〈もう結構〉というサインが見てとれましたので、そこで解放して差し上げることにしました。Bさんとは、互いに料理の皿を持った状態で顔が合いました。Bさんは私を十分認識していないようです。考えてみればBさんとの接点は、あるセミナーで互いに講師を務めたというだけのことです。それをBさんに思い出していただいただけで、分かれました。
これでおしまい。他に積極的に知己を得るべき方も見あたりません。パーティのプログラムはまだ続くようでしたが、ここらで退散することにしました。
ホテルの玄関から送迎バスに乗り込んだら、まばらな乗客の中になんとAさんとBさんを発見しました。彼らもまた私と同じような状況だったのかもしれません。楽しいパーティ帰りというよりは、義理を果たした安堵感に浸りながら駅に向かったのでありました。〈kimi〉
花は名所でブランドで
昨日の午後、花冷えの中を、誘われて新宿御苑へ行ってきました。
新宿駅の南口から新宿門を目指して歩き出したのですが、反対方向からものすごい人の流れ。「何かイベントでも終わったのかなあ」などと呑気なことを考えていたらとんでもない。お花見から帰る人の波でした。小学校の遠足以来、御苑へは何回も足を運びましたが、あんなに人があふれている御苑は初めてでした。日本人は本当に桜が好きなんですね。
新宿御苑の古木の桜は立派でした。周囲の空間が広いので悠々と太い枝を伸ばしています。しかし、新興住宅地にあるわが家周辺の桜も意外に美しいんです。植えて30~40年ほど、成年期の活きのよい桜は、もしかしたら御苑の桜より美しいかもしれません。
だからと言って、仲間と連れだっての花見となれば、新興住宅地でということにはなりません。そこはやはり花の名所がよろしいようです。今年は新宿御苑でしたが、東京で花見の本場と言えば上野公園。歴史的には飛鳥山。千鳥ヶ淵も、六義園も素晴らしい。隅田公園も捨てがたい。
「お花見に行った?」
「うん。千鳥ヶ淵に行ってきました。お濠に映った桜がきれいでしたよ」
という会話は成り立ちますが、
「お花見に行きました?」
「はい、近所の児童公園の桜を見てきました。きれいに咲いてましたよ」
それも結構ではありますが、なんとなく話が弾みにくい。客観的な花の美しさより、誰もが知っているブランド的名所での花見の方が話の種としては価値が高そうです。
新宿御苑が大混雑するのは、きっとそういうわけなんだろうと、半分納得したような、しないような・・・。それにしても混んでましたな。〈kimi〉