その世界の名人に修理調整を依頼していた万年筆が昨日戻ってきました。舶来高級品ではありません。プラチナ#3776ギャザードの極太。ワープロが普及する以前に原稿書きに使っていたものです。文章のほとんどをパソコンで書くようになって出番がなくなってから、インクがかすれるようになってしまいました。どうやらパソコンへの嫉妬が嵩じてヘソを曲げてしまったようです。
それでもずっと気にはなっていて、10年ほど前にも修理に出したことがあります。完璧とまでは言えないまでも、なんとか書けるようになって、再びメモ書きなどに使い始めました。それから間もなくのことです。某省のOBの前で、「この万年筆のインクがかすれましてねえ・・・」と口走ったのがまずかった。最後まで聞かないうちに私の手から万年筆を取り上げ、彼は部屋を飛び出して行きました。しばらくして、満面の笑みをたたえながら戻ってきて言いました。
「もう大丈夫。ちゃんと直したから」
以来、インクのかすれはさらにひどくなり、とうとうお蔵入りとなっていたのでした。中央省庁の官僚批判を耳にすると、いつもこの一件を思い出します。〈kimi〉
駅と線路が見つからない
アップルのiPhone5が発売されたものの、それに使われている新しい地図(正確にはiOS6の地図)が不正確だと批判され、CEOが謝罪する騒ぎになっています。弊社のオフィスの周辺も極めて大雑把にしか表示されず、そこにどういう基準で選ばれたのか不明な立ち食いそば屋などの飲食店がプロットされているなど、「こりゃあ使えないわ」としか言いようがない代物です。
アップルともあろうものがどうしてこんな地図をノーチェックで使ってしまったのか、不思議ではありますが、私が興味を持ったのは別の点です。
この地図は鉄道を軽視しているのです。東京で仕事をしている私たちは、地下鉄の路線と駅とその出口の位置を理解していないと甚だ不便なのですが、アップルの地図ではそれが極めてわかりにくい。徒歩や車で移動しているときは山手線や中央線、私鉄の路線やガードなどをランドマークにしていますが、それも明確に表示されません。
技術的な問題はわからないものの、日本人がつくった地図ではないのだろうと疑っております。日本人なら鉄道と駅をもっと大切にするのではないでしょうか。Googleの日本地図は日本の会社が協力して作成していると日経のWEBに書かれていました。
現地の人のビヘービアや感性に十分な配慮をしないとこういうことになる、というこれは一つの戒めではないかと思うのです。〈kimi〉