官僚批判

その世界の名人に修理調整を依頼していた万年筆が昨日戻ってきました。舶来高級品ではありません。プラチナ#3776ギャザードの極太。ワープロが普及する以前に原稿書きに使っていたものです。文章のほとんどをパソコンで書くようになって出番がなくなってから、インクがかすれるようになってしまいました。どうやらパソコンへの嫉妬が嵩じてヘソを曲げてしまったようです。
それでもずっと気にはなっていて、10年ほど前にも修理に出したことがあります。完璧とまでは言えないまでも、なんとか書けるようになって、再びメモ書きなどに使い始めました。それから間もなくのことです。某省のOBの前で、「この万年筆のインクがかすれましてねえ・・・」と口走ったのがまずかった。最後まで聞かないうちに私の手から万年筆を取り上げ、彼は部屋を飛び出して行きました。しばらくして、満面の笑みをたたえながら戻ってきて言いました。
「もう大丈夫。ちゃんと直したから」
以来、インクのかすれはさらにひどくなり、とうとうお蔵入りとなっていたのでした。中央省庁の官僚批判を耳にすると、いつもこの一件を思い出します。〈kimi〉

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