秋田県の十和田湖の近くでクマに襲われて亡くなったと思われる人が次々に4人も見つかっています。同じクマが襲ったのでしょうか。さすがに現代の新聞はそんな表現はしませんが、一昔なら「人食い熊」と書き立てたところでしょう。現地の人たちは恐怖のおののいているのか、冷静、平静でおられるのか、そのあたりが東京で新聞記事を読んでいるだけでは伝わってきません。
そんなことが気になるのは吉村昭さんの「羆嵐(くまあらし)」という小説を何年か前に読んだからです。大正4年北海道天塩の開拓村をヒグマが襲った事件を描いています。ヒグマを射止めようと集まった住民や警官や兵士らが恐怖にとらわれるありさまを静かな筆致で描いた名作です。
ツキノワグマとヒグマの違いはあっても、また当時よりもクマの生態がよく知られていても、さらに猟銃の性能がよくなっていても、怖いことはやはり怖いのではないでしょうか。
そんなことを考えながら、秋田魁新報のサイトを見たら、遺体発見場所の近くで地元猟友会員がクマを駆除したという記事が載っていました。それが4人を襲ったクマだったら、いくらかは安心できるのですが・・・。