彼はとまどえる群れの代表なのか?

トランプ氏当選のニュースを聞いて、米国の有名な言語学者ノーム・チョムスキーの「メディア・コントロール」という本を思い出しました。
彼は民主主義には2つの機能があると言います。
「責任を持つ特別階級は、実行者としての機能を果たす。(中略)その一方に、とまどえる群れがいるわけだが、彼らも民主主義社会の一機能を担っている。民主主義社会における彼らの役割は(中略)「観客」になることであって、行動に参加することではない。しかし、彼らの役割をそれだけにかぎるわけにもいかない。何しろ、ここは民主社会なのだ。そこで、ときどき、彼らは特別階級の誰かに支持を表明することを許される。(中略)これを選挙という」(鈴木主税訳 集英社新書より)
彼の考えによるならば、クリントン氏はまさに特別階級の一員であって、観客であることを強いられてきた「とまどえる群れ」の人たちが、今回の選挙では特別階級を支持しなかった、ということになりそうです。不幸なのは、それでトランプ氏が当選してしまったことで、彼が本当に「とまどえる群れ」の代表なのかどうか、いまのところまったくわからないということです。