吉田秀男と永井龍男

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永井龍男という小説家がいました。小学校を卒業しただけの学歴で文藝春秋の編集長になり、小説家、随筆家として知られ、文化勲章を受章しましたが、いまはほとんど忘れられています。この人の小説が好きで、かなり集めて読んだ時期がありました。
その永井龍男に「この人 吉田秀雄」という一冊があります。例の「鬼十則」を書いた電通の四代目社長です。電通の周年事業で請われて伝記を書いたもの。著者も吉田と面識がありました。その本があったはずだと書棚を探したら見つかりました。
「鬼十則」の項を開くと、
二十六年七月の五十一周年記念日に、「全社員、広告の鬼になれ」と呼びかけた秀男は、一ヶ月後さらに「鬼十則」を執筆して、全社員に配布した。
「鬼十則」の引用省略)
商業放送の目鼻がついて、ほっと一息つく間もなく、そういう自己に鞭打ったのがこの「鬼十則」と見てよかろう。自己を鞭打ち、自分はかく心がけていると、全社員に示したからこそ真剣さが上わずらずに伝わってくる。事実この十則を、社員に復唱させるようなことを、秀雄は決してしなかった。
61年後、この「鬼十則」そのものがいまのように鞭打たれようとは、吉田秀雄も永井龍男も、思いもしなかったでしょうね。
因みに、この本の出版元は朝日新聞社です。