喜びの表現

シリアスな記者会見のトレーニングで、笑顔を見せないようにとアドバイスすることがあります。サービス精神が旺盛なのか日本人の特性なのか、つい口元がほころんでしまう方がおられますが、そのような一部の方を除いては、深刻そうな表情を維持するのはそれほど困難なことではありません。
難しいのは喜びを表現する方です。記者会見で大喜びをするケースはめったにありませんが、たまにはお祝いごとや表彰式など、笑顔を必要とすることもあります。もちろん心の底から喜びがわき上がるときの表情は最高ですが、たいしてうれしくもないのにうれしい顔をしなくてはならないときが難しい。訓練を積んだ俳優さんならともかく、一般の方に、メディアトレーニングを行ったくらいでできるものではありません。
最近ミサイルの成功を北朝鮮市民が喜んでいるシーンがテレビに映し出されますが、喜びの仕草を振り付けるのに、かの地の当局者も苦労しているのではないでしょうか。彼らだって「白々しいジェスチャーだよなあ」と気づいているに違いありませんが、他に適当な喜びの表現やアイデアが浮かばないので、バンザイさせたり拍手させたりしているのでしょう。最高指導者の背中に負ぶさって喜んでいる軍幹部の写真もあります。あれは何度か撮り直したのでしょうか。「合図をしましたら、将軍は委員長のお背中に乗ってください。よろしいですか。ではサン、ニー、イチ。はい、撮れました」なんてやっていたとしたら面白いですね。

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