ある企業戦士の死

昨秋、一人の男が死にました。心筋梗塞と聞きました。
成功したサラリーマンでした。若いときは理不尽な上司に虐められました。いまならパワハラとして告発する方法もあったでしょうが、当時は我慢するか会社を辞めるかしか地獄から抜け出す方法はありませんでした。彼は我慢を重ねてしのぎつつ、支店長として営業成績を上げ続けました。
その後、会社の体制が変わった流れに乗って、昇進の道を突き進みました。
睡眠時間は3時間と決めました。当然、昼間は眠い。それを隠しながら仕事をしました。1年に100冊の読書をすることを自らに課しました。新しいツールにはすぐに飛びつきました。シャープが全盛の頃に売り出した電子手帳Zaurusの新型が出るたびに次々に買い換えました。Suicaが出ると、現金なしでどこまで暮らせるかに挑戦したりしました。
社外でも顧客である某職能団体と深い関係を構築し信頼を勝ち取りました。著書が数冊あり、講演依頼が引きも切らずの状態となりました。
若手の役員として経営の中枢を担いました。しかし、社長にはなれませんでした。会社を離れてからは消息を聞くこともまれになりました。会社のOBたちが集まると、昔の仲間のウワサで盛り上がるのですが、彼の話はトンと聞きませんでした。誰も彼に関心がないようでした。そして突然の訃報に接しました。
彼について深くは知りません。親しくもありませんでした。しかし、いまは耳にすることが少なくなった「企業戦士」という言葉を聞くたびに彼を思い出します。ご冥福をお祈りします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です