ネクタイ異聞

ある中堅メーカーが全社会議をオンラインで開催しました。そのとき社員が戸惑ったのはどういう服装で参加するかだったそうです。昨年来、自宅勤務が中心になっているその会社では、カジュアルな服装での自宅仕事がすっかり根づいていました。しかし会長、社長、役員が全員出席する全社会議となるとまた話は別です。
ある社員は悩んだ末、テレワークスーツでもパジャマスーツでもなく、いつものスーツにネクタイ姿でwebカメラに対しました。画面で他の社員を見ると全員同様なスタイルだったとか。下がジーンズだったかどうかまではわかりませんが。
オーナーである老会長は真夏を除いて常にネクタイにスーツまたは濃いめのジャケット姿を崩しません。頂上がそうなら九合目以下もそれに合わせるのが、日本企業というものです。
ここ10年来、外資系やベンチャー企業の社員はオフィスに出社するときもカジュアルな服装で、ネクタイ姿はほとんど見かけなくなりました。国内企業でも通年ノーネクタイという会社が増えてきているようです。もちろん営業の方はスーツが多いでしょうし、時と場合によっては内勤社員もスーツを着用するのだろうとは思いますが。
数年前、フランスに観光旅行に出かけました。知人へのお土産にネクタイを買おうとパリの百貨店を2軒ほど探し回ったのですが、ついにcravates売場を見つけることができませんでした。シャンゼリゼ通りを散歩したときも、スーツにネクタイ姿の紳士にはたった一人しか遭遇しませんでした。そのような流れが、COVID-19の流行を経て日本でもさらに強まっているのではないかと推測します。
帰国するとき、シャルル・ド・ゴール空港の免税ショップの中に大きなネクタイショップを発見しました。ネクタイはお土産としてのみ生き残っているのかもしれないなあ、と少々驚きました。
いや、買いませんでしたよ。ブランド品とはいえお土産品としてのネクタイは。

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