医療政策を勉強する

先週から毎週金曜日、「安心と信頼の医療・福祉のデザインー医療・福祉ジャーナリズムの視点からの考察ー」という長い長いタイトルの講座に出席することにしました。国際医療福祉大学大学院が讀賣新聞とタイアップして開いている特別講座です。医療広報を専門としている以上、こういうところにも積極的に出席して勉強しておかなくっちゃ仕事になりません。
というわけで出席してみると、会場には大手製薬会社の広報部長さんの顔がいくつも見えます。みんな勉強家だなあ、とも思いますけど、讀賣新聞の医療情報部や社会保障部の現役・OB記者がずらりと講師陣に名を連ねているのですから、その下心は知れています。私自身も、そうではないとは言いませんが、広報・IRコンサルタントとして仕事をしていると、日本の医療の本質的な問題をもっと理解しておきたいという気持が、企業の広報室長としていたときよりはるかに強くなってきました。
第1回のゲストスピーカーは元厚労省医政局長で副学長の岩尾総一郎氏でした。医療行政に関わってこられた実体験談など、有益なお話がたくさんありましたが、会場からの「政策をつくっているキーマンは誰か」という質問に、「役所は合議制なので、課長代理あたりから提案が上がって来る」と答えられたのには、なるほどと思い当たりました。
このところ仕事上の必要から、厚労省や経産省の方々とお話する機会が増えましたが、民間からの具体的な提案に対して、課長代理クラスの行政官のみなさんが予想以上に関心を持ってくれます。
吉村仁元厚生省事務次官が1983年に唱えた「医療費亡国論」が日本の医療行政に大きな影響を与え、四半世紀近くもこの発想に縛られ医療費抑制政策が続いてきました。ところが現在の経済危機を乗り切るための補正予算が連発されるようになって、いま状況は大きく変わってきました。岩尾氏によれば、すでに「医療費亡国論」の影響はなくなっているのではないか、とのことでした。
民間の提案への許容度が高くなったのも、そのためなのかもしれませんが、その場しのぎの予算執行のアイデアだけではなく、将来につながる制度改革の提案を業界もしなければならないし、政策立案者の側もそれをしっかりと受け止めてほしいものです。〈kimi〉